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映画「彼岸のふたり」制作秘話〜プロデューサー、監督、脚本家による座談会〜 – 彼岸のふたり
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映画「彼岸のふたり」制作秘話〜プロデューサー、監督、脚本家による座談会〜

衣装から生まれた物語

(左から、プロデューサー:桜あかり、脚本:前田有貴、監督:北口ユースケ)

北口:何から話しましょうか?この作品の成り立ちとか?

桜:そうですね。

北口:めちゃめちゃ不思議な制作の仕方やなと思ってて、最初に依頼を受けた時に、とにかく先に衣装を作らないといけないという謎のオーダーがあったんですよ。それは上田安子服飾専門学校の学生たちとコラボして、学生たちに作ってもらう衣装を映画に取り入れないといけないという。それが前期の課題だったので、夏休みに入るまでに衣装は完成させないといけないというのが、僕が最初に監督のお話をいただいた時に、決まっていたことなんです。「先に衣装を作らないといけないんです」って言われて「え、シナリオもキャラクターも何もできてない状態でそんなこと言われても」って(笑)

桜:確かに(笑)かなり無茶振りでしたね。

北口:「でもとにかくデザイン案を上げないといけないんです」って。
そこからのスタートでしたよね。僕が過去に48HOUR FILM PROJECTという映画祭で3本ショートフィルムを撮っているんですが、48時間以内にシナリオを書いて撮影して編集して短編映画を作る映画祭なんですけど、決められた小道具やセリフを絶対に使わないといけなかったり、ジャンルもくじ引きで決めたものに沿って作らないといけなかったり、決められたルールに則って作品を作らないといけないのですが、そういうのをやってきたもんだから・・・

桜:そういうの得意ですよね?って(笑)

北口:とにかく期限までに先に衣装を作らないといけなくて、しかも5パターン!

前田:5パターン?

(学生たちが描いた衣装デザイン案)

北口:そう、学生のチームが5チームあったから振り分けないといけなかった。それでアイドルの衣装を3着とDJの衣装、地獄の図柄が入った打ち掛け、ソウジュンの黒衣装、当時の物語とは変わってしまったので劇中には結局採用できなかったけど、オトセの衣装も2着制作していただきました。オトセの衣装は一応、オトセの実家には飾っていたんですけど、誰も気がつかないですね。アイドルの衣装はすんなりいきましたけど、打ち掛けをどうシナリオに落とし込むかというのがすごい大変でした。果たしてこれで良かったのだろうかっていうのはいまだにちょっと引っかかってる部分もあるんですけどね(笑)でもまあ、画のインパクトはすごいですよね。

桜:はい。初め仮タイトルが「地獄太夫」だったので、打ち掛けが出てきたと思うんですけど、この打ち掛けは自分の運命を受け入れて、それでも強く生きていく地獄太夫の象徴なのであって良かったと思ってます。ただ、現代の話にどう落とし込むのかはホント難しかったと思います。

北口:そうですね。前田さんが脚本作りに参加してくれる以前のプロットというのがもっと今とは全然違う話で、もっと露骨に夜の世界の話が主体になってたり、最初、朝比奈めいりちゃんの背中に刺青入れても良いですか?とか言ってて。もっと地獄太夫色が濃かった。打ち掛けは反社会勢力の事務所に飾ってて・・・みたいな。プロットは20パターンぐらい、ああでもない、こうでもないって書き直してましたね。

桜:すでにコラボが決まっていた服飾専門学校の衣装の件もありましたが、題材で堺市や児童養護施設っていうのと地獄太夫っていうのがキーワードになっていて、それが独り歩きしてしまっていたタイミングでお話をさせてもらったから、そういう課題がたくさんありましたね。

北口:衣裳が先行して映画が生まれるっていうのはなかなかないですよね。

桜:そうですね。ただ、きっと先行していなかったら打ち掛けは無かっただろうって思うと、私はあの打ち掛けとても気に入ってるので、このご縁に感謝してます。でも本当にインパクトはあったなと思います。

北口:インパクトはありますね。

桜:幼いオトセが打ち掛けにくるまっているシーンはやるせない・・・。

俳優たち

北口:あの子もすごい頑張ってくれましたよね。

桜:そうですね、ほんとに。

北口:リトルオトセ、徳網ゆうなちゃん。

前田:私あの後、ゆうなちゃんと別のお仕事で親子役をやったんですよ。

桜: ええ、そうなんですか?もう小学3年生とかかな?

北口:確かあの時で6歳くらいだったから。そうですね。この撮影2回中断したじゃないですか。1回はコロナのせいでその前にも、メインキャストが降板になったことがあって、でもそれがなくてスムーズに撮影が進行してたら、あの芝居はできてなかったかもしれない。中断の前後で、演出を聞いてる時の理解力が全然違ってる気がしたし、中断してる期間に確実に成長してましたね。

前田:子どもの1年は大きいもんね。

桜:うん、うん。

前田:(撮影現場が)怖かったって言ってましたよ。すごく怖かったって。

桜:大人でもあの場所はちょっと怖い。照明も全部消してたし。でもホントよく頑張ってたなって思います。

前田:お母さんが「でも監督は優しかったでしょ」ってフォローしてくれてましたよ。

北口: (笑)

桜:今回、北口監督が本当に色々な感情と向き合ってくれて、特にオトセも感情が高ぶってはいるけど、思うように表現ができない時とかもあったじゃないですか。

北口:はい。

桜:そんな時も本気で泣けるまで付き合ってくれて、あれは今思い出してもウルってします。彼女( 朝比奈めいり)が葛藤してるのを間近でみてきたので、リハの時もクランクインの時も常に不安との背中合わせというか、でも撮影を重ねていくたびに変わっていって。

北口: 本当にどんどん変わっていきましたね。僕も現場に入ってからは、彼女に対してはほぼ何も言わなかった気がします。

前田:めいりちゃんって、あの時点で女優としての経験はどれぐらいだったんですか?

桜:一応3本目にはなるんですけど、こんな形で自分とは全く違う人物と向き合って、いかにセリフではなく、心が動いて勝手に出てくるっていう感覚、オトセに身体を乗っ取られたような感覚は初めてで、本人もすごい体験をさせてもらえたと言ってました。
やっぱり他の役者さんが素晴らしくて並木さんと喋るところも自然と本気の声になっちゃうって言ってたし、やっぱり北口監督が惚れ込んだだけあるなっと思いました。

北口:その為だけに、twitterアカウント作りましたからね(笑)

前田:どういうこと?

北口:当時、並木さんにどうしてもオファーしたくて、窓口を検索したり人伝に連絡先聞いたりしたんですけどわからなくて、結局twitterしか連絡手段が出てこなかったんです。それでアカウント作って、@akie_namiki をつけて、「出演オファーしたいのですがどこに連絡すればいいですか?」って呟いたんですよ。

前田:並木さんはライジングサン国際映画祭でお会いしたときにお話させていただいたんですけど、本編の最初の方に、恋人が我が子を虐待してるのをお母さんが離れたところから見ているっていうシーンがあるんです。そのとき並木さん演じるお母さんが、「早く(お酒を)飲もうよ〜」みたいなことを言いながら、飲み物の入ったコンビニ袋をドアに当てて、ガンガン音を立ててるんです。並木さんは「そんな風にしか、あの時のあのお母さんは抵抗ができないんだ」っておっしゃってて。それを聞いて、ああ、やっぱりこの方は凄いなって思いました。あれって演出?

北口:いや、演出じゃないです。

前田:その話を聞いて北口君が惚れ込んだだけあるなって思いました。多分あのシーンって、見ている人は別にそういう風には受けとらないと思うんですよね。それどころか、ガンガン音を立てていたことすら覚えていないんじゃないかと思うんだけども、それだけ細部にわたって役を作り込んで考えていらっしゃるっていうことは、目に見えない作品のオーラとして、絶対伝わるんじゃないかなと思いました。

北口:冒頭のあのシーン、玉簾からちょっとこう出てきた時のあそこの表情、「ねえ」って呼びかけるところの微妙な表情というか、すごく微妙なさじ加減で細かく調整して何テイクかやらせてもらったんですけど、あそこの表情というか立ち方、もうあの役が背負っているものが全部表現できているなと思って、すごい理想的な登場の仕方というか。役者としては見習いたいなとも思いますし、本当に凄いなって。

桜:私は、オトセの髪の毛を触ろうとして拒否された後のリアクションが、おお!ってなりました。台本を読んで想像してたものとは違って、そうくるんだ!って、本当にそういう場面をたくさん見せて頂けたように思います。あとは、親子でぶつかり合うシーンの緊迫感が凄い好きです。

北口:並木さんのファーストショットというか、初日がホテルのロビーのシーンだったかな、予告編でも使ってるシーンなんですけど、オトセと14年ぶりに再開するシーンで、オトセを見つけてソファから立ち上がるシーン、あれを撮った時に、おお!って痺れましたね。並木さんで良かったって。
あのシーンを撮った時に、他のスタッフもなんで監督がそんなに並木さんにこだわってるのかが分かりましたって言ってました(笑) 並木さんの魅力は延々と語れそうですね。

桜:素晴らしい女優さんです。でも普段はすごいチャーミングで、可愛い人だなって思っちゃう。普段とのそのギャップにまたやられてしまう。

北口:現場でモニターを見ていて、もちろん監督として見ているけど、自分は俳優もやっているから、めいりちゃんとか、よし兄役の井之上チャルさんとかにちょっと嫉妬する時があって、自分も並木さんと一緒に芝居したいという気持ちを抑えながらモニターみてました(笑) いつか俳優として一緒にお仕事したいです。

桜:ドヰさんの役どころはきっと難しかったですよね。

北口:難しいと思いますね。僕自身も、現場に入るまで演出プランが見えてなかったですからね。

桜:でもなんか重くなり過ぎない場面の一つになったっていうか。

北口:そうですね。ドヰさんがいたお陰で、ちょっと軽くなったというか、そこはソウジュンの役割として脚本の段階でも意識してたと思います。

前田:正直言うと、最初は意外だったんですよね。ドヰさんがソウジュンをやりますって言われた時に、自分のイメージとはちょっと違ってて。

桜:もっと華奢なイメージ?

前田:そうかもしれないですね。幽霊とまではいかないですけど、ちょっとこの世のものじゃない、はかないようなイメージだったんです。ドヰさんって結構ガッチリされてるから。でも実際に完成したものを見ると、あのちょっといい加減な感じが、あ、ドヰさんがいい加減っていう意味じゃなくて、もちろんキャラクターとしてですよ(笑)そういうところが、マッチしてて面白いなって思いました

北口:初期の脚本ではオトセもソウジュンも死神の設定だったんです。そこから派生してああいうキャラクターになったんですけど、元々のアイデアがどこから来ているかというと、実は丁度脚本を書いている時に、別件で僕が仕事を一緒にしていた人で、すごい霊感が強くて、オーラとか守護霊とかが見えるっていう方がいて、僕もみてくださいって言ったら、北口さんは体質的に霊がめちゃめちゃ憑きやすいから、今こうして話してる間もいろいろな霊が入れ代わり立ち代わり出入りしてて、どれが守護霊かわからないって(笑)
今も周りの友達とかにそのことでいじられ続けてます・・・まあそんな話があって、ふと何かを選択する時にこれは、果たして自分の意志なのか。自分の意志のようにも思えるけど、実は背中に憑いてる誰かが誘導して、その選択をしてるんじゃないかって、中2みたいな妄想をしたことがあって、そこからソウジュンというキャラクターが生まれたんです。

桜:初めて見た人はどのタイミングで気付いてくれるんですかね。

前田:私もそれは気になります。

桜:初めて見た人がどこで違和感を覚えるのか?実在するのか?してないのか?どこから現れどこに消えるのか?

前田:私も思いました。それこそソウジュンは肉体派な感じで、野太い声で「おっちゃんはお嬢ちゃんのお友達」って(笑)見てる人はどうなんですかね。え、お母さんの新しい恋人?みたいな

北口:どうなんですかね(笑) 僕の悪い癖やとは思うんですけど、説明描写を省きすぎるから、あれもこれも撮っておいたら良かったと後で編集する時に後悔するんですけど・・・まあ、いいんじゃないですかね、どこでも(笑) 僕的には何者だかよくわからないまま観終わってくださっても全然いい。

桜:色んな捉え方できるので、いいですね。一度見て気になった方はもう一度見て・・・何度も楽しめる作品ですね。

愛してるのもブチギレるのも全部ホント

桜:やっぱり子育てしながら働くのって大変で孤独にもなりやすく、まだまだ世間は厳しいって思うんですよ。理解のある方もすごく増えているけど、それでも社会としてはまだ課題多いし、これを機に個々の思いやりから少しずつでも・・・

北口:この映画はそういう内容の映画とはちょっと違いますけどね。

桜:それでも何か繋がればいいなって思います。子育てに優しい世の中に。

北口:そうですね。僕もちょうどこの映画のお話をいただいた時に娘が生まれて、はじめて親になって、今考えてみたらよくその状況で映画を作らせてもらえたなって思いますね。妻の理解はもちろんですけど、そこも考慮してもらいながら無理のないスケジュールで撮影させてもらえたのは本当に感謝しています。基本的に早く家に帰りたかったから、僕も不必要に粘ったりはしなかったし、撮影始まって序盤で娘の1歳の誕生日があったから、そこだけは絶対に撮休にさせてくださいって言って、助監督が「え、まだ撮影開始3日とかですけどいきなり撮休ですか?!」って(笑)

前田:(笑)

北口:でも、子育てするようになって思ったんですけど、ブチ切れてしまう瞬間って絶対あるじゃないですか?

桜:あります、あります。私も姉妹で喧嘩とかはしてたけどそんなに大声出したりするようなことはなかったし、今までの人生で感情を剥き出しにすることって全くなかったのに、ましてや可愛い我が子のはずなのに、感情をコントロール出来なくなる瞬間とかありましたね。

前田:やっぱり子どもが言うことを聞かない時とかですか?

北口: 僕の場合は言うことを聞く聞かない以前の言葉を覚える前の段階だったので、ただ泣き続けて、なんで泣いてるのかもわからないし、寝ないし、子どもが寝ないとこっちも寝れないし、もうどうして良いかわからない。それで寝不足が続いたりストレスが溜まって、自分でもびっくりするくらいの声で怒鳴ってしまったり。でも後で冷静に振り返ってもなんでそんなに怒ってしまったのか分からない。

桜:わかります。声にならない時もあるけど、声がワって出てしまう時もある。子どもがまだ抱っこしているくらいの時に電車に乗ってたら、泣き初めたんですよ。子どもの泣き声ってすごく響くじゃないですか。それで側にいてるスーツ姿の人達もこっちを見てるし、目線が痛くて、一生懸命あやすけど、泣きやまなくて、仕事も忙しいタイミングで、遅刻できないから途中で降りて一回泣きやませてというわけにもいかなくて。もう子供の口を押さえちゃうかもって思うくらい私もパニックになって、もうお願いだから泣き止んでって思ってたら、近くにいた年配の女性が、「子供は泣くのが仕事やん。ねえ?」て電車に乗ってた他の人たちにも「ねえ?」って言ってくれて、あの人にホント救われたんです。あの人いなかったら、もうどうしようってなってたし、ほんとに口を押さえて「お願い静かにして」ってしちゃってたかもしれないって思い返すことがあって、ホントあの人に救われたと今でも感謝してます。でも、そんな状況になる人って結構いるんじゃないかなって思うんですよ。

北口:そうですね。誰でも一線を超えてしまう可能性はあるんじゃないかっていうのは子育てを経験して思いましたね。

桜:その可能性はあるって言われてるし、それがエスカレートしないタイミングで周りが声を掛けたりすることが出来たら、踏みとどまれる人もいるだろうし。

北口:環境ですよね。暴力なんて絶対ダメですけど、本人だけの責任っていうのはちょっと違う気がする。

桜:そうですね。

前田:虐待については、もちろんリサーチもしたんですけど、この脚本を書いてる時に、たまたま虐待をしているお母さんを演じる機会があったんです。虐待をしてしまうお母さんの心理についてじっくり考えるいい機会でしたね。例えば、虐待で殺してしまったって言うと、その行為だけがすごくピックアップされるじゃないですか。もちろんその行為は決して許されないことだけど、でもその子が5歳で亡くなってしまったとしたら、それまでの5年間はお母さんや周りにいる誰かが、その子を生かすために頑張ってきたっていうことだと思うんですよね。赤ちゃんってそのまま何もせずに置いておいたら、死んじゃうわけですから。でも5年生きてたということは、やっぱりお母さんも頑張ってたし、お母さんじゃないにしても必ず誰かがその子を一生懸命生かそうとしていた。その子が確かに愛されていた瞬間というのが、絶対どこかにあるはずなんです。だから、その最後の行為だけを責める、どうして車内に放置したんだとか、食べ物を与えなかったんだっていうところにばかり目を向けるんじゃなくて、その5年間、その子がどう愛されていたかっていうところもちゃんと見てあげないと解決しないというか、そこに目を向けることがすごく大事な気がするんです。

桜:私もすごく大事だと思います。取材に行かせて頂いた児童養護施設の方の話と報道されている事を見た世間の反応とのギャップにも違和感を覚えていたので…
まだ見えてないこともいっぱいあるし、少しでも目を向けたい。

北口:そうですね。でもそこの5年間の部分に目を向けさせられるのって、映画とか小説とか芸術の役割なのかなとも思います。

前田:この作品にしても、お母さんがオトセちゃんとまた一緒に暮らしたいとか、もう私を殺してほしいとかって言ったりするんですけど、それはそれで本心だと思うんですよね。子供がかわいい、愛しているっていうのも本心としてあって、だからこそ難しいというか。むしろ言葉が全部嘘で、ただお金が欲しくて騙しているんだったらまだ解決のしようがあるというか、コイツは酷いやつだなで終わるんですけど、そうじゃないから難しい。

桜:うん、難しい。

前田:愛しているのも本当だから。

北口:並木さんとどこが本心でどこが嘘でみたいな話しはディスカッションしたような気がします。

前田:あの言葉は全部本当だと思うんですよね。

桜:確かに。

北口:結局はそうですよね。

前田:でもそういう心理って、人間にはよくあることだと思うんです。例えば禁煙したい人とが、もうこの一本吸ったらやめようってその瞬間は本当に思いますよね。でも翌日になるとなんか色々と理由をつけて吸っちゃうみたいな。

北口: 演出してて、打ち合わせで言ってたことと全然違うことを本番の時に言うことはしょっちゅうありますけど、それは嘘を言ってるのではないし、瞬間瞬間でみんな変わっていくし、そう言うのを受け入れられるよにしたいなとは思うし、受け入れて欲しい(笑)

前田:人間誰しもにある心の動きなのかなと思います。

桜:どっちもウソじゃないし、どっちもホント。かわいいと思ってる瞬間も、そう思えないくらい追い込まれてる瞬間もホント。

ダークヒーロー物がやりたいんです

前田:私はこの映画の一番大事なことって、問題が何も解決してないことだと思っているんですよ。

北口:うんうん。

前田:夢ちゃんのことも解決してないし、オトセちゃんも多分、また同じことやるんじゃないかなって思うし。

北口:夢のマネージャーも罰せられてないですしね。

前田:絶対他の子にも手出してるよね。

北口:ラストの解釈って観た人の解釈が色々あっていいと思うし、僕も二人の結末はわからない。でも撮影現場の移動中に冗談で、福引で3等が当たる瞬間がオトセの人生のピークなんだとかって言ってましたね。

桜:(笑)

前田:ピークが3等。でもそれもありえるよね(笑)

北口:うん。でもああやって初めてちゃんと親子で向き合うことになった時に、多分もう1波乱か2波乱か、それ以上にもっとぶつかり合わないと、あの二人は幸せには辿り着けないだろうし、親子関係って別にお互いに理解しあわなきゃいけないってことでもないとは思うけど、あそこでオトセが逃げずに母親と向き合ったって言うのが大事なのかなと思います。逃げるのも簡単だし、14年間不在だった無責任な母親にやり返すのも簡単だと思うけど、そうじゃなくてちゃんと向き合えるって言うのがオトセの格好良さかなって思う。
最初の課題の話に戻りますけど、ダークヒーローものをやりたいんですっていう無茶なオーダーもあったんですよ。児童養護施設でダークヒーロって、それもうバットマンやんって(笑)途中でそのお題はもう忘れてくださいってなったけど、僕の中で最後まで引っかかってたこともあって、どっかにその要素は入れたいなって思ってたんですよ。
スーパーパワーは使えなくても、「自分の運命とちゃんと向き合う」っていうのは僕なりのヒーロー像として、お題には回答できたんじゃないかなと思います。僕は面倒なことからすぐ逃げたりスルーしちゃうから、オトセみたいな生き様はカッコイイなって思います。そう言う意味ではオトセは地獄太夫ですし、ダークヒーローなんですよね。

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